根っこの中の感染を防ぐ:ラバーダム防湿

前回は、まず歯内療法(歯の根っこ•神経の治療)に対する考え方を変えるべきだと書きました。


医療としての歯内療法(神経を取るというをダメージを受けた歯を生涯にわたって口の中で機能させる目的で行う)を行えばいいだけなのです。(簡単ではありません…)

『歯が保存できる可能性が少しでもあるなら努力しなきゃ。


厳しい言い方になりますが、採算が合わないと思いながら悶々とやってるうちや、趣味で行っているとかのレベルでは、なかなか治療結果はついてこないものです。いくら工夫してもボランティア診療では長続きしないと思います。

『たとえ採算が合わんでも、押忍!の心で…』

『耐えれませんって。(笑』


「保険の歯内療法でも一生懸命やると患者さんはわかってくれるので、上物である被せ物に自由診療を選んでくれる確率が高い。」と言う人もいますが、そういう淡い期待?で治療を行ってもストレスが溜まるだけじゃないでしょうか?

『いつかは、いつかは、わかってくれるはず〜!』

『どっちかというとわかってくれない人が多いと思います。ハイ。』


これも家を建てる時と同じで、上物にいい被せ物を選択するなら、基礎工事にあたる歯内療法も最初から成功する確率が高い方法を選んだ方が患者さんも歯科医側もいいはずです。そして、患者さん心理としては被せ物の種類に関係なく基礎工事にあたる歯内療法はちゃんとしてほしいはずでしょう。ちゃんとした治療をするためには、時間もお金もかかるとなぜ素直に説明できないのでしょうか?

『説明ってこんな感じで、

わかりやすく。』



それに、被せ物の種類に関係なく失活歯(神経をとった歯)が長持ちするかどうかは歯内療法の成功率に左右されるところが大きいと思います。


患者さんの中にはセラミックなどの自由診療を選べば歯は長持ちすると勘違いされている方も多いのですが、

被せ物の種類は歯が長持ちするかどうかに関係ありませんし、被せ物が病気を治すわけではありません。

『よく考えればわかりますよね。』



今回から、まだまだ修養が足りないとは思っていますが、医療としての歯内療法を成功させるためにはどうすればいいか?具体的に岡歯科ではどう取り組んでいるのかを書いていきたいと思います。


根管内(歯の根っこの中)感染を予防する!


歯の神経を取るときや根っこの再治療のとき根管内に細菌感染を起こせば、歯内療法は失敗する確率が高くなります。

なので、

『歯内療法は無菌的に行うべき処置なのです。』

神経が通っていた歯の中は顎の骨と繋がっていますので、歯内療法は体の中の一部分を扱う治療であるとの考えです。(手術で皮膚を切開して体の中を触る時、無菌的処置を心がけますよね。それと同じです。)

『それが、どーしたあああ!!!』

そこで、多くの歯科医は歯内療法の器具を滅菌して使用します。

しかし、肝心の歯の中が無菌的に保たれる様な努力はしない場合が多いようです。

滅菌スリッパとか滅菌器具にこだわる歯科医が、肝心の歯内療法になると感染予防の努力をしないのはなぜでしょうか?

これはぜひ理由を教えてほしいと思っています。


根菅内(根っこの中)が細菌で汚染される原因はいろいろと考えられますが、大きな原因は唾液中の細菌感染です。そのため治療中は、唾液から治療する歯を隔離する必要があります。その方法をラバーダム防湿と言います。


『ラバーダム防湿』 キタ〜!!!


ラバーダムをしない多くの歯科医はほとんどロールワッテ(綿を細長く丸めたもの)や簡易唾液吸引装置(Zooなど)で簡易防湿なるものを行って、歯内療法を行っています。

『ロールワッテってこんなの。』

『Zooってこんなの。』

ロールワッテを治療する歯の頬側と舌側に置いて、唾液が染み込んで来たら新しいものと交換しながら治療を行う方法です。この方法では、いつロールワッテが外れるかもしれず、唾液の染み込み速度が早い場合には知らない内に根管内はすぐ唾液で汚染されてしまいます。

『実際、唾液で汚染されまくり。』

簡易唾液吸引装置はロールワッテよりましですが、ラバーダムより感染する確率は高いですし、歯内療法の作業自体がやりにくいです。

余談ですが、簡易防湿を取って治療途中にうがいをさせたらそれだけで根管内は汚染する恐れが高くなってしまいます。

『こんな感じで治療する歯を孤立させます。』

『写真お貸りしました。すみません。』


ラバーダム防湿は患歯(治療する歯)を孤立させて唾液の侵入を防ぎます。この方法には唾液の侵入を防ぐ他に、舌や頬を排除して患歯を孤立させるのでストレスが少なくなって治療に集中出来るというメリットや、歯内療法に使用する針みたいな小器具(リーマー、ファイル)や洗浄液(殺菌のため強めの薬液を使用する)を口の中に落として飲み込ませないというメリットもあります。

『安全第一』


岡歯科ではほぼすべての症例でラバーダム防湿を行いますが、患者さんに「ラバーダム防湿をいままで受けた事がありますか?」と聞くと、ほとんどの方は「こんな方法は知らなかった。」と言います。それほど、歯科医はラバーダム防湿をやりたがりません。


中には「ラバーダムなんてやってもやらなくても関係ないので必要ない。」と言う歯科医もいますが、根管内の感染が歯内療法の失敗の大きな原因であると考えると、感染を少なくする努力は惜しむべきではないでしょう。


歯科医がラバーダムをやりたがらない理由として、せからしいから•コストの問題(たいしたコストはかかりません)•やったことがない•患者さんがいやがるから etc 出来ない理由をつらつらとあげますが、一番の理由は歯科医自身がラバーダム防湿を必要と感じていないからだと思います。



やった方がいい事を必要としていないと言う理由でやらないのは、歯内療法に対する『考え方』や『心構え』が根本的に違うのでは?としか考えられません。

米国では獣医でさえ、犬の歯の治療

ラバーダム防湿を必要としているみたいです。

ラバーダム防湿をしない日本の歯医者さんって…

犬の歯の治療にラバーダムをしているサイトはここ


歯内療法のセミナーに行くと治療器具の扱い方は懇切丁寧に教えてくれますが、『考え方』や『心構え』などを口酸っぱく教えてくれるセミナーはあまりありませんし、何時間かのセミナーで『考え方』や『心構え』はなかなか変わらないものです。

前回も言いましたが、治療器具の扱い方を学ぶ前に、歯内療法は感染性疾患を扱っている病気の治療をしていると認識することだと思います。自分の経験から言わせてもらうと、『考え方』が根本的に変わらないと、必ずラバーダム防湿を行うという風にはなかなかならないものです。


 

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