先日行った講演会で、演者の先生が面白い事を言っていました。
先生は元某歯科大学で歯内療法学(歯の根っこ治療)の教授をされていて、今は縁があって九州某県で開業されています。
その先生が九州で仕事を始めた感想として…
『九州ってインプラントの敷居が低いんだよね!』
宮崎で開業している僕は『?』と思いましたが、その理由は。
『何でか、こっちに来たら下顎の根分岐部病変(下顎の奥歯で根っこのまたの部分の骨が溶けている病気)が多いんだよ。』
と、
『なぜか調べてみると、昔 歯内療法を教えに来た先生が、ここ(下顎6番近心根の上の歯質)はタービン(ドリル)でガーっと削り落として、神経取ればいいんだよ。って教えたらしいんだ。』
それで、ガーっと削った時 分岐部にパーホレーション(穿孔:歯に穴を開けてしまう事)を起こして根分岐部病変を作っているケースが多いそうです。
『それで、抜歯してインプラントと言われ、何とかならないか?とウチに来るケースが多いんだよな〜。』
と、言っていました。さらにボソッと冗談で、
『僕はこれを○○(某県名)病と名付けた。』
とおっしゃってました。
先生は講演を盛り上げるため面白おかしく話をしてくれたのですが、九州で開業している身としては、『○○病』あまり笑える話ではありませんでした。
たしかに根分岐部病変の予後が悪いのも分かります。エンド由来の根分岐部病変をすべて治せるとは限りませんし、根分岐部病変は歯周病由来の場合もあります。
けどですよ〜、けどですよ〜、
今の時代は顕微鏡もありますし、MTAなどパーホレーション治療に使える薬剤も手に入ります。なので、エンド由来の根分岐部病変だった場合、治せる可能性もあるわけです。
そして、治療すれば残る可能性のある歯を簡単に抜歯してインプラントと判断するのは、歯医者さん的にはいいかもしれませんが、困る患者さんも居ると思うんですよ。
確かに、インプラントで素晴らしい欠損補綴をされる先生は九州にたくさんいらっしゃいますし、インプラント治療を否定もしませんが、
インプラントの前に『インプラントにならないようにするためにはどうしたらいいんだろう?』と考えることも大切だと思いませんか?
そうしないと、今後インプラント治療も活きてこないと思うのですが。
下顎大臼歯の近心根はイスムスとかで繋がっている場合も見られ、内壁の歯質が薄く気をつけないとパーホレーションを起こしやすい場所なのです。そういう知識を持てば注意して触ると思うんですよね。^^
顕微鏡を入れた頃出会った『○○病』の下顎大臼歯
初診時レントゲン写真
大きな根尖病変もありました。これを九州の先生が見たら、何人かは抜歯と判断するのかな?^^
根管充填後のレントゲン写真
この矢印の根中央から横に白く出てるのが、
『○○病』をMTAで修復した所
顕微鏡があるから出来る治療です。
術後4年目のレントゲン写真
インプラントの敷居が低い九州で真逆の方向性のウチは…